宅建試験で重要な民法の「意思表示」について、頻出テーマを一つひとつ解説します。
意思表示とは?
「意思表示」とは、内心で持った意思を外部に伝える行為を指します。例えば、売買契約や賃貸契約を結ぶ意思がこれに該当します。
ちなみに契約は、相手に「こういう条件で契約しませんか?」(申込み)と提案し、それに対して「いいですよ」(承諾)と同意すると成立します。
宅建試験では、この意思表示が有効か無効か、取り消し可能かが問われることが多く、特に問題がある意思表示が重要です。
1. 心裡留保(しんりりゅうほ)
心裡留保とは?
表意者が本心とは異なる意思表示をすることです。(いわゆる冗談というものです)
【具体例】
「本当は売りたくないのに、『売ります』と言った場合」
心裡留保の効果
- 原則:有効
相手方が表意者の真意(冗談ということ)に対して善意無過失の場合は意思表示は有効です。
そりゃ言った人間がそもそも悪いのですから。
- 例外:無効
冗談を言った相手側が表意者の真意を知っていた、または知ることができた場合は無効になります。
相手側を保護する必要がないからです。
ただし、意思表示の無効は、善意の第三者(無過失まで求められない)には対抗できません。
試験対策ポイント
- 原則有効ですが、「善意無過失」の相手方は保護される点(つまり有効)を覚えましょう。
- 善意の第三者が出てきた場合は、誰を保護すべきかを考えましょう(これは全ての問題ある意思表示に言えることです)この場合は善意の第三者より表意者の方が責任が重いので善意の第三者を保護する必要性が高いのです。
2. 虚偽表示(きょぎひょうじ)
虚偽表示とは?
表意者と相手方が示し合わせて嘘の意思表示をすることです。仮装売買などがこれに該当します。
【具体例】
差し押さえを逃れるため、売買契約をしたふりをするが、実際には取引がない場合。
虚偽表示の効果
- 原則:無効
- ただし善意の第三者は保護される
虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗できません。(無過失まで求められない)
これも虚偽表示という責任がある当事者よりも、何も知らない第三者を保護する必要性があるからです。
3. 錯誤(さくご)
錯誤とは?
意思表示をした際に重要な事実を誤認していた場合を指します。(いわゆる勘違い)
錯誤には、言い間違いや、入力ミスなどの錯誤(表示上の錯誤と言います)と、意思表示に至るまでの動機に関して錯誤がある場合の二つがポイントです。
表示上の錯誤
2000万の土地を買おうと思って言い間違いで2億と言ってしまった場合です。
この場合
- 原則:取り消すことができる
- 例外:表意者に重大な過失があった場合→取り消しできない
- 例外の例外:①相手が表意者に錯誤があることを知り、重大な過失により知ることができなかった場合。②相手が表意者と同じ錯誤に陥っていた時→取り消しができる
動機の錯誤とは?
意思表示の背景にある動機(意思を形成する理由)が間違っていた場合をいいます。
【具体例】
Aさんが「この土地は商業用地だ」と信じて購入を決めたが、実際には住宅用地だった場合。
錯誤の効果
- 原則:取り消しができない
- **例外:**動機の錯誤が相手側に「表示」されていれば取り消しできます。ただし表示された動機が重要な事項である必要があります。
善意無過失の第三者には対抗できません
試験対策ポイント
- 動機の錯誤は「表示されていること」が取り消しの条件です。
4. 詐欺(さぎ)
詐欺とは?
相手を騙して誤解させ、意思表示をさせる行為です。
【具体例】
土地の価値を偽って高値で売りつける行為。
詐欺の効果
- 原則:取消できる
- 第三者の保護:善意無過失の第三者には対抗できない
詐欺を受けた人間も何らかの落ち度があるからです。
試験対策ポイント
• 「取消」と「無効」の違いを押さえましょう。
• 善意の第三者に対する取消の効果が制限される点に注意。
5. 強迫(きょうはく)
強迫とは?
相手を脅し、恐怖心を与えることで意思表示を強制する行為です。
【具体例】
暴力をほのめかし、無理やり契約を結ばせる行為。
強迫の効果
• 原則:取消可能
• 第三者の保護:詐欺と異なり、善意の第三者にも対抗可能
試験対策ポイント
強迫の場合、第三者に対抗できる点が詐欺と異なる重要なポイントです。
強迫を受けた人間を保護することが最優先だからです
【まとめ】
「意思表示」は宅建試験の民法分野で重要なテーマです。特に動機の錯誤については、例題を通じて理解を深めることが得点アップにつながります。それぞれの概念について、以下の表を参考に整理してください。
概念 ,原則の効果 第三者への影響
心裡留保 :原則有効 :善意の第三者は保護
虚偽表示 :原則無効: 善意の第三者は保護
錯誤 :原則取り消し可能 例外:取り消しできない 動機の錯誤の取り消しは表示が必要
詐欺 :取消可能 善意無過失の第三者は保護
強迫 :取消可能 第三者にも対抗可能