不動産の所有権に関する論点の一つに「取得時効」があります。これは、一定期間にわたって他人の土地を占有し続けることで、法律上その土地の所有権を取得できる制度です。宅建士試験では頻出の論点なので、重要なポイントを押さえておきましょう。
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1. 取得時効の論点とは?
取得時効とは、一定期間の占有を継続することで、占有者がその土地の所有権を取得できるかどうかが争点となる論点です。宅建士試験では、占有の開始時の状態や占有の継続、承継、期間の計算などが問われることが多く、各要件を正確に理解することが重要です。
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2. 取得時効の成立要件
取得時効が成立するためには、以下の要件を満たす必要があります。
① 所有の意思(民法162条)
占有者が、その土地を自分のものだと思って占有していることが必要です。借地権などに基づく占有では、所有の意思が認められないため取得時効は成立しません。
② 平穏かつ公然の占有(民法162条)
占有が「平穏」(暴力や強制を伴わない)であり、「公然」(隠れていない)であることが必要です。例えば、密かに土地を利用していた場合、取得時効の成立は認められません。
③ 一定期間の占有(民法162条)
占有を続ける期間は以下の2パターンがあります。
善意無過失の場合:10年間
占有開始時に、他人の土地であることを知らなかった(善意)かつ、その認識に過失がなかった場合
悪意または過失がある場合:20年間
占有開始時に、他人の土地だと知っていた場合(悪意)、または知らなかったとしても注意義務を怠っていた場合(過失)
ここで重要なのが、善意無過失かどうかの判断は占有開始時に行われるという点です(判例)。つまり、占有を開始した時点で「自分の土地だ」と信じていた場合、その後「他人の土地だった」と知ったとしても、占有開始時の判断が適用され、10年間の占有で取得時効が成立します。
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3. 取得時効の論点と具体例
(1)占有者が変わった場合(占有の承継)
取得時効の途中で占有者が変わった場合、その占有が引き継がれるかが論点となります。
占有の承継が認められる場合(民法187条)
前の占有者の占有期間を後の占有者が引き継ぐことで、占有期間を合算できる。
例:AさんがBさんの土地を7年間占有し、その後Cさんが5年間占有した場合、Aさんが善意無過失なら、Cさんは占有期間を合算し、10年経過後に取得時効が成立する。
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(2)占有開始時の善意・悪意の影響
占有開始時の「善意・無過失」か「悪意・過失あり」かによって、取得時効の期間が異なります。
占有開始時に善意であれば、その後悪意になっても10年で取得時効が成立(判例)
例:Aさんが占有を開始したとき、「自分の土地だ」と信じていたが、5年後に「他人の土地だ」と知った場合でも、10年占有すれば取得時効が成立する。
占有開始時に悪意だった場合は、20年間の占有が必要
例:最初から「他人の土地と知っていた」場合は、20年間占有しなければ取得時効は成立しない。
このように、占有開始時に善意無過失であれば、その後に事情が変わっても占有開始時の判断が適用されるため、試験では特に注意が必要です。
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4. 宅建士試験での重要ポイント
宅建士試験では、取得時効に関する論点がよく問われます。特に次のポイントを押さえておきましょう。
✅ 善意無過失なら10年、悪意または過失があれば20年の占有が必要
✅ 善意無過失かどうかの判断は占有開始時に行われる(その後に悪意になっても影響しない)
✅ 平穏・公然・所有の意思をもった占有が必要
✅ 占有者の変更があっても占有の承継が可能(民法187条)
特に、占有の承継に関する判例や具体例を理解しておくと、本番での得点力がアップします。
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5. まとめ
取得時効は、長期間にわたる占有を法律的に保護する制度であり、宅建士試験でも重要な論点です。
善意無過失なら10年、悪意または過失があるなら20年
善意無過失かどうかの判断は占有開始時に行われるため、その後の事情変更は影響しない
占有の承継が可能な場合がある
これらの論点を押さえ、宅建士試験に向けてしっかり準備しましょう!
【宅建士試験】時効①取得時効の論点をわかりやすく解説

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