【宅建士試験対策】時効②消滅時効とは?判例と根拠条文をもとにやさしく解説!


1. 消滅時効とは?

消滅時効とは、一定期間権利を行使しないと、その権利が消滅してしまう制度です(民法166条1項)。これは、「権利の上に眠る者は保護しない」という考え方がもとになっています。

宅建士試験では、消滅時効の 起算点、期間、適用範囲、確定判決後の時効延長、不法行為に基づく損害賠償請求権の時効 などがよく出題されます。特に 債権の消滅時効の期間と起算点 は試験で頻繁に問われるため、しっかり理解しておきましょう。


2. 消滅時効の根拠条文

(1) 債権の消滅時効

債権の消滅時効については、民法166条1項 に次のように定められています。

民法166条1項

  1. 債権は、次のいずれかの場合に、時効によって消滅する。
    1. 権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき。
    2. 権利を行使できる時から10年間行使しないとき。

つまり、「権利を行使できることを知った時」から5年間 または 「権利を行使できる時」から10年間 のいずれか早い方で、時効が完成することになります。


(2) 不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効

不法行為による損害賠償請求権の時効は、一般の債権とは異なるルールが適用されます(民法724条)。

民法724条

  1. 不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
  2. 損害賠償請求権は、不法行為の時から20年間行使しないときも、時効によって消滅する。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、
損害と加害者を知った時から3年
不法行為が行われた時から20年

のいずれか早い方で完成します。


(3) 人の生命・身体に関する損害賠償請求権の時効

不法行為による損害賠償請求の中でも 人の生命や身体に関する損害賠償請求権 は、一般の損害賠償請求よりも長い時効が適用されます(民法724条の2)。

民法724条の2

  1. 人の生命・身体に関する損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
  2. 不法行為が行われた時から20年間行使しないときも、時効によって消滅する。

一般の不法行為に基づく損害賠償請求権は3年ですが、生命・身体に関する請求権は5年 となっている点が重要です。


(4) 所有権には消滅時効が適用されない

消滅時効が適用されるのは 債権や所有権以外の財産権 で、所有権は 消滅時効の対象外 です(民法166条2項)。

民法166条2項
所有権は、時効によって消滅しない。

ただし、20年間他人に占有されると、取得時効(民法162条) によって所有権が移転することがあります。この点が試験でもよく問われるので、注意が必要です。


(5) 確定判決がある場合の時効延長

裁判で債権の支払いが確定すると、消滅時効の期間が10年間に延長 されます(民法169条)。

民法169条
確定判決によって確定した権利は、10年間行使しないときは、時効によって消滅する。


3. 重要判例(消滅時効に関する最高裁判例)

(1) 消滅時効の起算点に関する判例

最判昭和57年10月28日
判例要旨:「権利を行使できることを知った時」とは、債権者が自分の権利を行使できると認識し、行使することが可能な状態にあることを意味する

この判例では、消滅時効の「5年」のカウントは、債権者が権利を行使できると認識した時点から開始 すると明示されています。


(2) 確定判決による時効延長に関する判例

最判平成10年6月12日
判例要旨:「確定判決によって確定した権利は、時効期間が10年に延長されるが、それ以前に完成した時効を復活させるものではない。」

この判例では、裁判で債権が認められた場合、新たに10年間の時効がスタートする ことが示されています。


4. 宅建試験で狙われるポイント

宅建士試験では、以下のポイントがよく出題されます。

債権の消滅時効は「権利を知った時から5年」or「権利を行使できる時から10年」
不法行為による損害賠償請求権の時効は「知った時から3年」or「不法行為時から20年」
生命・身体に関する損害賠償請求権は「知った時から5年」or「不法行為時から20年」
所有権には消滅時効が適用されないが、20年間占有されると「取得時効」で失う可能性がある
確定判決後の債権の消滅時効は10年に延長される


5. まとめ

消滅時効は宅建試験で頻出のテーマなので、基本的な条文や判例を押さえ、過去問を解きながら理解を深めていきましょう。

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